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MPEGの展望(その5)

1.概要

MPEGの展望と題して、圧縮技術を主にご紹介してきましたが、今回は、これまでの纏めとしてMPEGを使用した機器について記述いたします。
特に、MPEGでは符号化するエンコーダーの仕様を定めておらず、復号化するデコーダーの仕様のみが定められている為、エンコーダーの性能はメーカーの技術力によって左右されることになります。
一方、使う立場から見ますとMPEGは、通信、放送、蓄積メディア等に幅広く使用されており何を基準に機器を選択すれば良いかの判断が難しく用途に合わせた機器の選択が重要になります。

2. 蓄積メディアについて

一般的に蓄積メディアと呼ばれるものには、磁気テープ、ハードディスク、半導体などがあり、価格的にも記述した順に高価になります。

 

-1. 磁気テープ
磁気テープは他のメディアと異なりデータのアクセスに時間を要する欠点がありますがコスト的に優れていると云えます。
磁気テープを使った蓄積メディアの代表的な製品は、皆様おなじみの∨TRが有ります。これまでは非圧縮で商品化されていましたが、96年ソニーから圧縮技術を使ったデジタルベータカムが発表され、以後圧縮画像が徐々に認められる様になり現在に至っております
当初の圧縮方式は、メーカ独自の方式で圧縮率も1/2程度でしたが、圧縮技術の規格化や技術進歩によってMPEGが広く用いられ圧縮率も高く高画質の製品が商品化されております。 当初の仕様は、MPEG2の「MP@ML」が用いられておりましたが、放送業務用としては画質が不十分なこともあり「422P@ML」が採用されております。

 

-2. ハードディスク
ハードディスクはコスト、アクセス時間など蓄積メディアとして最適なレベルに有ると云えます。
欠点としては、回転ヘッドを用いて磁気デスクにアクセスしている関係上記録エラーや読み取りエラーが発生します。以前より価格が下がった事も有ってコンシューマー製品にも採用されております。
此まで長時間記録や制作編集等の業務にはVTRを使用することが当然でしたが、編集作業でカット点等を検索する時間が遅い欠点が有りノンリニヤ編集と呼ばれる編集システムが商品化されハードディスクが使用されるようになりました。
ノンリニヤと云われるのは、磁気テープが時系列に処理する事に対してハードディスクはランダム処理が可能なことから銘々されたと云われております。確かにノンリニヤシステムですと検索時間が短縮されますので制作効率は格段に良くなります。また、市場導入の増加と共にハードディスクの低価格と高密度化が図られ、MPEGの技術進歩と共に圧縮技術が採用され大容量の蓄積メディアが商品化されております。しかし、テープ と違いハードディスクは故障すると、記録されているデータが全て失われることになるので、通常は複数のディスクを用いたRAID構成を採用し欠点を補っております。
RAID構成のご紹介は別の機会に譲るとして、この方式を用いますと1〜2台のディスクが故障してもそのまま続けて使用することが出来ます。

 

-3. 半導体
半導体は、記録スピードでハードディスクより若干遅くなりますが、電気信号のみで動作しており記銀/再生時のエラーは少なく寿命的にも一番優れております。しかし、価格が高価なため限られた用途でしたが、最近はメモリーチップと呼ばれる小容量のメディアから普及しております。
また、半導体の場合は他のメディアと較べ機構部分が無いので処理スピードが早いように思われますが、メモリーに書き込まれているデータを消してから新たに書き込むため遅れが生じることになります。また、書き込みと読み出しを電気的に切り替えて使用しますので、この繰り返し回数で寿命が有るとも云われております。しかし、蓄積メディアとしては優れており、さらなる技術進歩が進み価格の問題が解決できれば広く使用されると云えます。

 

以上の代表的なメディアにMPEGの圧縮技術を使ってデータの書き込みと読み出しを行っていますが、大別して2つの使い方が有ります。

 

-1. 蓄積したデータを単に読み出すだけに使用するケース。
-2. 蓄積したデータを読み出し、読み出したデータを加工し再度蓄積するケース。

 

ケース1は、送出を主にした場合で MPEGの代表的な仕様で機種選別が可能になります。
ケース2は、制作編集に使用する場合で機能としては、此までのVTR編集と同様な機能を有することが期待されますので、MPEGのエンコーダーの性能が機能を左右することになり、商品仕様だけでなくエンコーダーにどの様な圧縮技術を使用しているかの調査が必要になります。

3. 通信と放送について

BSデジタル放送が12月1日より開始されましたが、このシステムもMPEGの圧縮技術を駆使して完成されたものです。本来、アナログ信号をデジタル化しますと必要とする帯域は広く成りますが、圧縮技術を使うことで信号の多重化が図れ、トータル的に帯域を少なく伝送することが可能になります。特に、通信や放送では使用する回線の伝送レートが規定されており、ドラマやスポーツ等番組の内容で伝送レートを自由に変えることは出来ません。その点、蓄積メディアですとビットレートやメモリー容量は価格との兼ね合いで選択する自由度が有ると云えます。
では、通信や放送の場合に限られた伝送路をどの様に使用しているかを紹介します。
一般的に衛星やケーブルの伝送レートは、そこに使用されるデバイスの性能で制約を受けます。衛星の場合は利用する周波数帯域の制約が加わりますが、メタルケーブルと光ケーブルでは明らかに後者の方が優れていることは皆さんご存じの通りです。
では、限られた規格の中で、どの様にして多チャンネルの番組を伝送するかについて一例を紹介します。
通常、衛星放送のビットレートは32Mbpsと云われており、この回線に複数の番組を多重化し伝送しております。例えば、6Mbpsのビットレートを必要とする番組を6チャンネル伝送しようとすると回線の規格をオーバーすることに成ります。そこで、スポーツ、ドラマ、天気予報等の番組に割り付けるビットレートを予め決めて多重化しトータルで32Mbpsにすることができ、この技術を「統計多重」と云います。この方式を採用することで、動きの早いスポーツ番組に多くのビットを割付ることが出来ますので高画質が確保されることになります。この技術は、今年のinterBEE2000でも紹介されておりましたが、この理論は多重化した各番組のビットレートが同時に高くなる確率が低いことを利用し、入力信号の絵柄に合わせてダイナミックにビットレートを変えて多重化する方法です。
この様に通信や放送の場合は、限られた伝送路を有効に活用し如何にして高画質を確保するかが重要な技術といえます。以上、5回にわたりMPEGの概念をご紹介して来ましたが、最終回の纏めとして「画像を圧縮した以上、画質の劣化は避けられない」と云うことを念頭に、機器の機能や性能を掌握し、機材の運用を工夫することが必要と考えます。

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