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MPEGの展望(その4)

1.概要

MPEGの展望として、圧縮技術の原理とMPEGの基本技術を概念的に紹介してきましたが、これらの技術を使い商品化されるまでには、様々な工夫がなされております。一方、商品化された製品を使う立場として考えた時、何を根拠に機材の選択をすれば良いかが課題になります。
そこで今回は、これらの技術を使って画像を圧縮したときの画像劣化について記述いたします。
初めに、画像を映像信号に変換する代表的な方式にNTSCが有りますが、この方式の弱点と云われる輝度信号と色信号の干渉によって発生するクロスカラーやクロスルミナンスは、皆様ご存じの画質劣化です。
この現象は方式特有の劣化であり、圧縮処理に用いられる入出力信号は、基本的にコンポーネント信号を使用しますので、この現象は起こりません。
しかし、NTSCに変換した段階で劣化が伴うことになりますので、ここでは方式変換の劣化を除いた圧緬処理過程に於ける画像劣化について紹介いたします。

2. 圧縮処理の画像劣化について

圧縮処理の過程で起こる画像劣化は「DCT処理」や「予測符号化」等の圧縮処理を行う際に必然的に発生する劣化で、アナログ技術では見られない現象と云えます。特に、早い動きのあるシーンや絵柄の変化が大きいシーンで突発的に発生する傾向があります。
では、本題の「画像劣化」ですが、画像圧縮する過程に於ける固有の現象について紹介いたします。
初めに、これまでご紹介いたしました内容を纏めてみますと

 

(1)圧縮の基本原理として
*人間の視覚特性を利用する。
*画像の冗長度を利用する。

 

(2)圧縮技術として
*サブサンプリング処理
*DCT(離散コサイン変換)処理
*量子化処理
*動き補償処理
*双方向予測処理
以上がありこれらを駆使し圧縮処理が行われております。

 

2−1.サブサンプリング処理
サブサンプリング処理とは、入力された映像データを間引くことによって圧縮する方法で解像度が低下し「ぽけ」た画像になります。
一般的に云われております、「4:2:2」「4:2:0」とか「4:1:1」と表現されているのはサンプリング周波数の比率を表します。この比率からも解りますように、輝度信号のサンプリング周波数に対し色信号のみが変化しております。このことは、人間の視覚特性が輝度信号より色信号に対して劣化が検知しにくいことを表しておりこの特性を利用しております。
また、画素を間引いた場合アナログ技術で周波数帯域が狭い時に見られる現象と同様な画質劣化が発生することに成ります。

 

2−2.DCT処理
「ブロック歪み」と云われる劣化です。DCT処理は始めに画面分割を行い分割されたブロック単位ごとに圧縮を行っている関係で、ブロックの境界付近で圧縮結果に差が生じると、本来見えないはずの境界が見えてくる劣化で圧縮率を高く取ると発生する確率が高くなります。
特にDCT変換した際に周波数成分が低い部分でこの差が発生すると顕著に劣化が見えます。もともと変換された周波数成分の低い部分と云うのは、画像のベースを構成している部分であり、隣接するブロックでは連続性が保たれていなくては成りません。圧縮のビットレートが5Mbpsとか15Mbpsと様々な仕様が有りますがビットレートに限って云えば5Mbpsより15Mbpsの方が、「ブロック歪み」に対して有利であると云えます。

 

2−3.量子化処理
「モスキートノイズ」と云われる劣化です。DCT処理で映像信号を周波数成分に分解し、その後に量子化を行いますが圧縮効率を高める為に、周波数成分の低い部分より高い部分の圧縮率を高くして処理しております。
この過程で高域成分の処理が粗くなると劣化が発生することになります。劣化の現象としては、絵柄の縁の部分にモヤモヤしたノイズとなって見えます。特に画面の中で動く部分があるとノイズの出かたが変化しますので、あたかも蚊が飛んでいるような状況になるのでこのような名称で表現されています。この現象は、圧縮のビットレートにも関係しますが、むしろ入力信号に、格子縞や縞模様などの絵柄を含む画像部分で発生する確立が高くなります。

 

2−4.動き補償予測
「ジャーキネス」と云われる劣化です。前回の動き補償予測の項で紹介しました動きベクトルを検出する処理の精度によって左右され、この精度が低くなると画像の動きに滑らかさを欠いた現象となって現れます。
しかし、検出精度を高めると云うことは動いた範囲を正確に検出することであり膨大な処理が必要になりますので、他の処理技術を併用し最適化しております。

 

2−5.双方向予測
「フリッカー」と云われる劣化です。圧縮された画像は、GOP構造によりIPBのピクチヤーから構成されており、各々のピクチヤーは目的に合わせた圧縮処理が行われております。特にBピクチヤーは予測効率を上げることに着目しており、結果として他のピクチヤーより画像の高域成分が少なく成ります。この為、他のピクチヤーと比較して高域成分のレベル差が大きくなると画像を復元したとき、Bピクチヤーと他のピクチヤーが切り替わる毎にフリッカーが発生します。
通常、映像信号はフィールド毎で映像レベルや周波数成分に差が出ることは少なく障害にならないのですが、VTRなどでは調整不良等で発生することがあり、現象としては同じ症状になります。

 

2−6.GOPの構造
「GOP構造」については、前回ご説明しましたように、IPBのピクチヤの配列とその配列の繰り返し周期を表し、一般的にGOP構造としては、N=12、M=3 が使用されていると紹介しました。しかし、この構造はビットレートとメディアの関連を踏まえて採用されておりますので、入力信号が冗長度の少ない絵柄や縞模様の細かい絵柄などで「ぼけ」や「ブロック歪み」が発生します。一般的に云えることは、GOP構造が長いと入力画像の絵柄に画質が影響されやすいと云えます。


以上が代表的な画質劣化と成ります。 画像圧縮は、基本的に圧縮効率と画質の兼ね合いになりますので何らかの劣化が伴います。この為、これら劣化を補う様々な技術を駆使し商品化されておりますが、画質を評価する基準が難しく主観的に成らざるを得ませんし、MPEGの規格もデコーダーで復元する仕様を規定しているだけで、符号化 するエンコーダーの仕様は定めておりません。従って、劣化が有ると云うことを念頭に入れ「目的」に合わせた仕様の選択が必要になります。

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